難関の医学部受験をクリアする
医者になるには、医師国家試験にパスして医師国家免許を取得することが大前提です。
その医師国家試験を受けるためには、大学の医学部を卒業することが必須条件のため、まずは医学部に入学することがスタート地点となります。
医学部のある大学は全国に80校あり、国公立と私立があります。学費や偏差値、カリキュラムなどは大学によって異なりますので、まずは自分がどの大学の医学部をめざすのかを決定し、受験勉強を始めます。
医学部受験は大学受験の中でも突出して難関といわれ、全国から優秀な学生が医学部をめざします。熾烈な受験戦争を突破するには、覚悟と努力が欠かせません。
医学部で6年間勉強し医師国家免許を取得
医学部に入学したら、6年間かけて医学の基礎をみっちり学びます。
一般教養から始まり、基礎医学や臨床医学などの座学はもちろん、解剖実習などさまざまな実習をこなした後、5?6年次は大学付属病院などの医療現場で臨床実習を行います。
そして卒業時に医師国家試験を受け、みごとパスすれば、ようやく医者として活動できるようになる、というわけです。
1学年
まずは基礎の分野を学びます。1学年目では教養医科学を通じて医療知識を根本から学習。特に解剖学は、今後学習する科目の基本となる重要な分野です。内容は2学年以降の解剖実習も想定しているため、確実にマスターしましょう。ほかにも、1年目からインターンシップを行っている大学もあります。早い段階から実際の医療現場を経験することで、知識とともに実践力も身につけることが可能です。
カリキュラムのなかにはPBLチュートリアルが含まれています。この学習方法は、学生自身で評価と学習を行うことが目的です。少人数制となっているため、チューターを中心にいくつかのグループに分かれて協議を行います。ディスカッションを通じて将来、医療チームを結成したときの協調性や積極性も鍛えられるでしょう。
2学年
2学年では医学専門教育が始まり、基礎部分の学習がより本格化します。まずは人体の構造や病気の原因、予防手段を学習。解剖学や生理学、医科学といった実習を通じて知識をさらに深めます。解剖実習では遺族の許可をもらい提供された実際の人体で行うため、命に対して考えを改めるとともに、医師として重要な責任を実感できるでしょう。
生化学実習では糖や脂質、アミノ酸の機構を学びます。それぞれ分解や合成を行うことで、代謝の仕組みや物質のつながりを学習することが目的です。ほかにも神経生理学実習では、事前に学習した内容をふまえて行われます。神経の仕組みと生体機能について、グループ形式で学習を進行。主に観察やシミュレーションを通して行うため、事前に予習をしておくと安心です。
3学年
基礎科目をマスターした3学年では、これまで学習してきた内容をもとに臨床医学の科目が始まります。総合科目として臓器や器官の疾患、病態について学習。それぞれの科目を習得するとともに、実習に向けた基礎を学びます。大学によっては、基礎医学と臨床医学を統合したカリキュラムもあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
放射線医学では、X線や磁気共鳴を利用した画像診断、悪性腫瘍の治療に関する放射線治療学といった基礎知識を習得します。また放射線被ばくを防ぐ管理や、防護についても同時に学ぶことも特徴です。
疾患の原因を知り治療や予防法を明らかにする免疫学では、最初に基本的な用語や基礎知識を習得します。遺伝子や細胞単位で学ぶと同時に、医学や生物学への影響についても理解を深めましょう。
4学年
引き続き臨床医学を学ぶ4学年では、基礎医学を復習するとともに臨床実習に向けた準備を進めます。診断学の実習は、基本的な外科の手技に加えて診察方法、一次救命処置といったより実践的な内容が特徴です。
臨床実習の前には知識取得と技能評価を目的としたCBT、OSCE試験を実施。CBT試験の問題はPCによってランダムで作成されているため、学生ごとに異なっています。問題の内容や難易度は調整されており、評価基準のばらつきもありません。
OSCE試験では、実際の診察や医療面接の能力を評価します。それまで学んだ知識だけでなく、適切な情報をヒアリングする能力や的確な診断技術も重要です。2つの試験は各大学共通のものとなっており、すべて合格することで臨床実習に参加できるようになります。
5学年
5学年では臨床実習が始まります。実習ではグループに分かれて各科に配属。チームの一員として医師のサポートや診断の記録を行います。場合によっては、実際の患者を相手にヒアリングや診断をすることも珍しくありません。実習先は大学に付随する大学病院、あるいは近隣の医療センターで実施されることがほとんどです。なかには大学とつながりのある外部病院で実習を行うこともあります。これにより地域基盤に根付いた、より実践的な経験が可能です。
この段階になると、医師国家試験を見据えた試験勉強が始まります。5学年目は実習を受けながら自習時間の確保が必要となるため、自己管理能力が求められるでしょう。キャンパスや実習先の施設によっては、自習室や学習室を開放しているところもあります。学生同士の意見交換の場としても活用できるため、効率的に利用してみましょう。
6学年
集大成となる6学年目は、個別の専門性をはかるための臨床実習が行われます。この実習は、将来希望する診察科を決める重要な内容です。また授業の一環として、今まで学んだ内容を統括する集中講義も実施。全体的な仕上げとしては、毎年2月に行われる医師国家試験に向けた学習指導も行われます。
医師国家資格の合格に向けた手厚いサポートの用意は、各大学共通です。そのため苦手科目があっても、模擬試験や個別指導を通じて克服を目指せるでしょう。個人だけでカバーできない箇所は、担当教員とのコミュニケーションや学生との意見交流も重要な学習機会となります。選んだ大学に関係なく合格に向けたバックアップ体制は整っているため、定期的に利用するとともに確実な合格を志しましょう。
2年以上の研修を経験する
医師国家免許を取ったばかりの医者は、いってみれば医療行為を一度も行っていない「見習い医師」。
そのため免許取得後の2年間は研修医として、病院や医療施設で臨床研修を受けることが義務付けられています。
初期研修と呼ばれるこの期間中は数ヶ月単位で内科や外科、小児科などさまざまな診療科をまわり、指導医や専門医の下について患者さんの治療にあたりながら、医療現場で経験を積むことになります。
研修医は見習いとはいえ医師の1人ですから、研修期間中は給料が支払われます。その反面、当直で病院に泊まり込むことが多く、休みもほとんどないのが実情。かなりハードな毎日が続きます。
スーパーローテート(初期研修)とは
スーパーローテートは、厚生労働省により平成16年に開始された研修の仕組みです。これは必修となっており、専攻に関係なく幅広い科をローテーションします。プライマリケアと呼ばれる医療知識の基礎や技術を、幅広く習得することが目的です。また患者に対して全人的に診察ができる医師の育成も背景にあります。
研修はアルバイトしてではなく、教育の一環として行うため、学習に専念できるでしょう。大学によっては、大学病院からスタートする方法と一般病院から始める方法が選べます。
スーパーローテートの期間が終了したあとでも本人が希望すれば、科によってさらに研修を受けることが可能です。なお内容やプログラムは、各病院や専攻を検討している科ごとで異なります。将来専門科を希望する方でも、各科で得た知識が応用できるため、トータル的に見て大きく成長できる制度といえるでしょう。
研修先は「マッチング」で決まる
初期研修の研修先はマッチング制度を利用するとスムーズです。研修先とのマッチングは就職活動のようなもので、自分を売り込む必要があります。学生は病院から指名されるように早めにアピールをしましょう。マッチング制度の利用方法は以下の通りです。
- ・希望する研修先へ見学
- ・願書を提出
- ・採用試験の受験
- ・医師臨床研修マッチング協会のサイトで受けた試験の順位を登録
- ・マッチングの結果を確認
見学は希望する研修先を受ける前に必ず行いましょう。病院側は見学の際に研修医として受けいれられるかをチェックします。学生側も実際にどのような環境で研修を受けられるかの把握が大切です。受け入れ先によっては、見学そのものを受検の条件としているところもあります。研修時に双方の齟齬がないようにあらかじめ確認しましょう。
はれて医者デビュー!でもまだまだ研修は続く…
2年間の研修が終わると、ようやく医者として独り立ち!大学病院に残るか、他の病院に就職するか、医者としての進路を選択することになります。
多くの医者はここから専門の診療科を1つに絞り、専門科の知識と技術を深堀りするため、さらに数年間の後期研修を受けるケースが多いようです。
後期研修が終わって専門科の認定医・専門医の資格を取って、ようやく一人前の医者と呼ばれるようになります。