医師とよく似た名前の資格に歯科医師と獣医師があります。それぞれ異なる資格なので、医師免許を持っていても歯科医師や獣医師として診療に当たることはできません。ここでは、医師、歯科医師、獣医師の違いや就職先について、詳しく解説していきます。
おさらい!医師になる方法
まず大前提として、医師になるためには医師免許が必要です。その医師免許を取得するためには、大学の医学部に6年間通わなければなりません。医学部を卒業したら自動的に医師になれるわけではなく、医師国家試験の受験資格が得られるだけです。医師国家試験の合格率は90%前後。試験は年に1回だけなので、合格できなかったら次のチャンスは1年後です。医師国家試験に合格したら2年間は研修医として経験を積み、その後就職となります。
医師免許があっても獣医・歯科医にはなれない
医師免許があっても、獣医師や歯科医師として診療することはできません。獣医師については獣医師法の第十七条で「獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。」[注1]と定められているからです。
歯科医師も歯科医師法第十七条で「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。」[注2]とされています。
獣医師になるには
獣医師も医師と同様、獣医系大学で6年間の課程を修めた上で、獣医師国家試験に合格しなければなりません。獣医系の大学は全国に16箇所しかないことから、医学部のほうが入りやすいと言われています。また、同じ獣医学部でも専門性に違いがあるため、獣医師としてどんな仕事をしたいのか考えた上で進学する大学を選んだほうが良いでしょう。
獣医師国家試験の合格率は全体で88.3%(2018年)。このうち、新卒者の合格率は96.9%となっており、真面目に勉強すれば合格しやすい試験と言えます。[注3]
医師免許と獣医師免許は全くの別物です。もしも医師免許を持っている人が獣医師免許を取得するとしても、普通の人と同様に獣医系大学で6年間学び、獣医師国家試験を受ける必要があります。
獣医師資格を取得した場合の就職先
獣医師の就職先としてもっとも多いのは動物病院で、主にペットの診療を行います。牧場や動物園に就職して動物の診療を行う人も多いです。
地方公務員として保健所や食肉衛生検査所で働く獣医師も少なくありません。この場合、一箇所の勤務先に勤めるというわけではなく、ローテーションで複数の機関を回ることになります。動物の感染症が出た場合など、緊急の対応に追われることもあるでしょう。国の機関である農林水産省でも獣医師を募集しています。
獣医師に向いている人
獣医師には動物全般に対する愛情が求められます。しかし愛情が先行してしまうと冷静な判断ができなくなってしまうため、現実に向き合う力も必要です。高い専門性が必要な仕事なので、就職してからも勉強を続けられる人に向いています。
歯科医師になるには
歯科医師になるためには、歯科医師免許を取得する必要があります。医師免許同様、大学の歯学部で6年間のカリキュラムを修め、それから歯科医師国家試験に受験、合格しなければなりません。医学部と歯学部では解剖学、生理学、病理学など、共通の基礎科目があります。対象部位が限られているだけで、歯科医師と医師はよく似た資格と言えるでしょう。
2018年に行った歯科医師国家試験は、全体の合格率が64.5%、このうち新卒者の合格率は77.9%でした。[注4]近年では歯科医師が過剰に増えていることから、試験の難易度が上がっていると言われています。
また、歯科医師国家試験に合格したらすぐに就職できるわけではなく、1年以上の臨床研修が必要です。
歯科医師資格を取得した場合の就職先
歯科医師の多くは歯科医院で勤務します。医師は病院で勤務する人も多いですが、歯科医師は8割が開業すると言われており、街の歯医者さんとして働く人が多い傾向です。現在ではコンビニ以上に歯科クリニックが存在していると言われています。安易に開業しても、思うように集客ができないかもしれません。
大きな病院の歯科で働くこともできますが、採用枠は少なめ。臨床以外の就職口としては、大学の研究員や、保健所に勤務する地方公務員が挙げられます。
歯科医師に向いている人
歯科医師は口の中の細かい作業を行うため、手先の器用さが必須です。腕がいいことはもちろんですが、患者さんとのコミュニケーション力も欠かせません。特に最近は歯科医院の数が増えているため、患者さんが受診したいと思うような親しみやすさが求められるでしょう。
医師も獣医師も歯科医師もそれぞれ免許が必須!
医師も獣医師も歯科医師も、大学で6年間学んだ上で、国家試験に合格することが必要です。いずれの国家試験も合格率は高めですが、大学で学んだことをしっかり身につけておかなければなりません。合格したあとも知識をアップデートしていく必要があるので、どの資格も勉強熱心な人が向いているでしょう。開業してもお客さんが思うように集まらないこともあり、戦略的に経営していく力が必要です。
参考文献